【アーティスト紹介Vol.12】菊川 夏未さん – ピアニスト

船橋にゆかりのある音楽家をご紹介。第12弾はピアニストの菊川 夏未(きくかわ なつみ)さんにお話を伺いました。

法田中〜市船で吹奏楽に青春を捧げたピアニスト

ふなおん

本日はよろしくお願いします。はじめに菊川さんと船橋とのつながりを教えてください。
馬込沢の近くで幼い頃から育ち、小学校は丸山小学校に通いました。法田中学校〜市立船橋高校に進み、中高では吹奏楽にのめり込みました。担当楽器は打楽器(パーカッション)でした。

現在はコンサートでの演奏やピアノ伴奏のお仕事のほか、船橋市内でピアノ教室も主宰しています。

菊川さん

ふなおん

法田中も市船も吹奏楽の強豪校ですよね。吹奏楽強豪校の部活とピアノとの両立は苦労も多かったのでは?
めちゃくちゃ大変でした(笑)

音楽大学のピアノ科を目指す人は練習量が勝負になるので、普通は部活動は禁止なんです。でも自分はピアノも部活も両方やりたくて、そのことを中学の担任の先生に相談したら「やりたいことがたくさんあるなら全部やっちゃいなよ」と言われ、それに背中を押されて両方とも頑張りました。ピアノの先生は怒ってましたけどね(汗)

菊川さん

ふなおん

音楽大学を目指そうと思ったのはいつ頃ですか?
2歳から音楽教室に通い始めて、中学2年生の頃に大学は音大ピアノ科に進学したいと思い始めました。その頃、ピアノと部活に加えて塾もどんどん忙しくなっていって「自分が本当にやりたいことってなんだろう?」と自問自答したんです。そこで出た答えが「自分はピアノが一番やりたい!」という気持ちでした。それからはピアノ・部活・勉強を優先順位として、寝る時間を削って両立させるよう頑張りました。

菊川さん

ふなおん

ピアノに負けないくらい吹奏楽も大事にしていた背景にはどんな想いがあったのでしょうか?
市船吹奏楽部への強烈な憧れがありました。中学の部活の友人のお兄さんが市船で吹奏楽をやっていて、一度演奏を観てからは追っかけをするくらい憧れていました。

千葉には習志野高校や柏高校といった吹奏楽の絶対王者のような存在がありますが、王者を倒すぞ!という雰囲気で頑張っているのが本当に格好良いなと思ったんです。

希望通り市船高校に進学して吹奏楽部に入ることができて、もちろん大変なこともたくさんありましたが、本当に楽しい高校生活を過ごしました。吹奏楽を通じて、みんなで力を合わせて一つの作品を作り上げていくという音楽の醍醐味をたくさん味わうことができました。

菊川さん

部活で培った根性でがむしゃらに突き進む音大時代に出会った恩師

ふなおん

高校卒業後は武蔵野音楽大学に進学されたんですよね。大学生活はいかがでしたか?
当たり前ですが音大にはピアノがめちゃくちゃ上手い人がたくさんいて、自分はピアノに関しては落ちこぼれで入学しました。ただ、部活で培った気合いと根性で、入学後は人一倍ピアノに打ち込みました。

菊川さん

ふなおん

部活で養った根性が音大でも役に立ったんですね!音楽面で吹奏楽に打ち込んでいて良かったと感じる場面はありましたか?
吹奏楽を通じてたくさんの合奏経験を積んでいたので、複数人で演奏するアンサンブルや他の楽器の伴奏に自然と興味を持つようになりました。部活をやっていたからこその苦労もありましたが、中学高校での合奏経験は確実に今の自分に繋がっていると思います。

また、吹奏楽部の中でピアノ以外の楽曲に取り組めたことは、とても貴重な経験だったと思います。特に高校ではオーケストラの作品に取り組むことも多く、ピアノではなかなか演奏機会のない作曲家にも触れることができました。

演奏を聴いたり楽譜を読んだりするだけではなく、実際にメンバーの一人として大編成の作品に参加したことのあるピアノ科の人は少ないと思います。こうした経験に基づいて、楽曲に向き合うことができるというのは私の強みかもしれません。

菊川さん

ふなおん

音大で特に印象に残っていることはどんなことですか?
リート(ドイツ歌曲)の大家である子安ゆかり先生に師事することができたのがもっとも大きな出来事です。子安先生のドイツリート伴奏法のクラスは、大学3年生からオーディションのうえ若干名が所属できるのですが、4年生のときにオーディションを突破し受講することができました。

子安先生の深い音楽性と素晴らしい人柄に惹かれてリートの魅力に取り憑かれ、大学院でも子安先生に指導を仰ぎました。今でもたまにレッスンをして頂いています。

先生には今でも強い憧れの気持ちを抱いているので、先生のレベルに少しでも近づけるようにもっと自分を磨いていかねばと思っています。

菊川さん

クラシック音楽に正面から向き合い本質を表現することを目指す

ふなおん

大学院を卒業後は演奏活動に加えてピアノを教える仕事にも取り組んでいるとのことですが、講師業の手応えはいかがですか?
教える仕事にも非常に楽しく取り組むことができています。音大時代に落ちこぼれだったので「できない人の気持ちが分かる」のが良いのかもしれません。最近は新たな試みとして、動画を活用したオンラインレッスンにも取り組み始めています。

菊川さん

ふなおん

演奏活動はどのようなものに取り組んでいますか?
大学・大学院の仲間たちと企画するコンサートでソロを弾いたり、子安先生とのご縁でドイツ歌曲のコンサートにも定期的に参加させて頂いています。クラシック音楽の魅力をより幅広く伝えたいという気持ちを持っているので、自身が演奏する場面では曲やその背景がより伝わるよう丁寧な解説を行うことも心がけています。

その他には伴奏のお仕事を頂く機会が多くあります。先日は吹奏楽連盟が主催する個人コンクールで市内の中学生の伴奏を受け持ったのですが、どの子も本当にレベルが高くて船橋の音楽レベルがますます上がっていくのではないかという期待が膨らんでいます。

菊川さん

ふなおん

クラシック音楽以外も演奏されるのでしょうか?
少し前は自身の目指す方向性に迷ってポップスやジャズに取り組んだ時期もあったのですが、今はクラシック音楽に絞って活動しようと考えています。

菊川さん

ふなおん

菊川さんの音楽家として目指す姿はどのようなものでしょうか?
楽譜の音をただ弾く・並べるだけではなく、楽譜を通じて作曲家が描こうとした景色や感情など、音の先にある世界を表現し伝えていける演奏家を目指しています。

また、自分自身が現在進行形で演奏活動に取り組む中で得た知見を生徒に還元していけるような音楽家になりたいので、演奏業と講師業とを1:1で並行して取り組めたらと考えています。

菊川さん

船橋への想いと今後の展望

ふなおん

菊川さんが思う船橋の良いところ・もっとこうだったら良いのにというポイントを教えてください。
私は法田中・市船で本当に良い部活に出会うことができ、市内の様々な場所での演奏では多くの方から温かい声援も頂き、船橋アリーナのような大きな会場でも演奏することができました。振り返ってみると非常に貴重な経験です。市民一丸で応援してくれる雰囲気の中で部活動に取り組めるのは、市の厚いバックアップがあればこそと思います。

その一方で、そういった恵まれた環境から音楽を志す人が現れた際の成長後の受け皿が少ないように思います。特に私が専門とするクラシック音楽の分野を見ると、手頃なサイズのホールが少ないこともあり、クラシック曲を臆せず演奏することができる場所がなかなかありません。そういった場が増えると、若い音楽家がレパートリーを貯めていくことができて次のステップにも進みやすくなるように思います。

菊川さん

ふなおん

最後に、今後の菊川さんの展望をお聞かせください。
目指す音楽家像に近づくためには、もっともっと勉強しなくてはいけないと思っており、改めてバッハ・ベートーベン・ショパンといったピアニストの基本とも言うべき作曲家の作品について勉強し直しています。

またドイツ歌曲への理解を深めるために、ドイツ語の勉強に取り組むとともに、何とかドイツへの留学も実現できたらと頑張っています。

菊川さん

菊川 夏未 – ピアニスト

武蔵野音楽大学器楽学科ピアノ専攻を卒業後、同大学大学院を修了。

ピアノを杵渕茂登子、桑原淑子の各氏に師事。伴奏法を子安ゆかり、アクセル・バウニ、三ツ石潤司、室内楽をクレメンス・ドルの各氏に師事。

現在は合唱やコンクールなど伴奏ピアニストとして活動する傍ら、後進の指導にも力を入れる。

またパーティーやレストランでのBGM演奏、自身でもコンサートを企画したりと幅広く活動している。

日本テレビ某番組にてピアノ講師として出演。
野坂陽子シャンソン教室伴奏ピアニスト。
菊川音楽教室主宰。


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