【アーティスト紹介 Vol.22】 越尾 ひろみ さん – ピアノ・リトミック講師

船橋にゆかりのある音楽家をご紹介。第22弾は千葉県内を中心に大好評の親子向けリトミックコンサートを多数開催し、塚田駅近くにおいて音楽シェアスペースも構える越尾 ひろみ さんにお話を伺いました。

塚田の音楽シェアスペースを拠点として子ども向け音楽活動に取り組む

ーはじめに越尾さんの現在の活動について教えてください。

中心は小さい子どもたちを対象とした音楽活動です。

これまで千葉県内のカフェやサロンスペースなどを中心に、たくさんの親子向けリトミックコンサートを行いました。それと並行して、保育園やコミュニティセンターなどで、0歳から参加できるリトミック講座も担当してきました。

2021年5月からは、東武アーバンパークライン塚田駅すぐ近くに、幼児音楽教室とシェアスペースを兼ねた「Solana(ソラーナ)」をオープンし、現在はそのスペースを利用してのリトミック教室やピアノ教室の講師を務めつつ、シェアスペースの運営にも携わっています。

越尾さん

ーご自身の教室をオープンするにあたって、船橋を選んだのはなぜですか?

船橋には結婚を機に10年ほど前から住み始めました。

自宅近くで良い場所が見つかったことに加えて、塚田は新たな小学校や住宅ができて新たに引っ越してくる人たちも多いはずなので、船橋への移住者の先輩として特に他の市町から移り住んでくる人たちの助けになりたいと思ったんです。

越尾さん

電子オルガンと吹奏楽に打ち込んだ青春時代

ー越尾さんと音楽との出会いは?

幼稚園のときに近所の音楽教室で電子オルガンを習い始めました。音楽がやりたいというよりは、仲の良いお友達が通っている教室に一緒に行ってみたいという気持ちの方が強かったです。

本格的に音楽にのめり込むようになったのは小学校3〜4年生の頃です。先生の勧めで大会に出てみたら、右も左もわからない状態だったのですが、幸運なことに賞を頂けたんです。演奏に評価がついてくるという体験が本当に嬉しくて、その受賞がきっかけになって自主的に音楽に向き合うようになりました。

越尾さん

ー小さい頃からずっとオルガン一筋だったのですか?

オルガンの個人レッスンには中学〜高校時代もずっと通っていましたが、中学校では吹奏楽部にも所属しました。最初はトロンボーンを担当し、途中でフルートに転向しました。

それまで基本的には一人で音楽を作るオルガンの世界しか体験したことのない自分にとって、複数人で一つずつ音を重ねて合奏していく吹奏楽はとても刺激的でした。みんなで一つの音楽を作っていくことにのめり込み、吹奏楽コンクールにも青春を捧げました。

また、オルガンをずっとやっていた経験から、吹奏楽のスコア(総譜)を見るのが好きでした。吹奏楽の曲をオルガン用に編曲して弾くようなこともしていましたね。

越尾さん

ー音大に行こうと思ったのはいつ頃でしたか?

中学生の頃から、将来は音楽大学に行こうと決めていました。吹奏楽部の友人で、同じく音楽の世界を目指す友人がいたんです。友人であると同時にライバルのような存在でした。

また、吹奏楽部の顧問の先生も私を音楽の世界に導いてくれました。音大を卒業した先のことまでは具体的には考えていなかったのですが、その先生への憧れもあり、音楽の先生になるのも良いかもという気持ちがどこかにありました。

越尾さん

ー高校でも吹奏楽を?

いえ。大学は音大に進むことを決めていたものの、高校は普通高校、それも地元では上位レベルの進学校だったため、学業と音大受験の準備で手一杯でした。たまに吹奏楽にエキストラとして参加させてもらっていましたが。

田舎なので他に選択肢も無かったのですが、高校時代は「もっと音楽の話ができる環境が欲しい」と常々感じていました。

越尾さん

ー音大での学びはいかがでしたか?

洗足音楽大学で電子オルガンを専攻しました。夢に見た音楽漬けの生活を送ることができ、とても充実した学生生活でした。

電子オルガンの演奏家は、音楽家でもありエンジニアでもあります。音楽の勉強はもちろんのこと、イメージした音を電子オルガンで鳴らすためにはどうしたら良いか、ということもたくさん勉強しました。

越尾さん

ー大学時代に特に力を入れたことは?

私は電子オルガンでクラシック音楽を演奏することを専門としていました。特にラフマニノフの交響曲を研究材料として、電子オルガンでの表現を追求していきました。

越尾さん

音楽データ制作の道で自分の音楽を表現

ー大学卒業後はどのような進路に?

中学時代に抱いた先生への憧れもあり、大手音楽教室で講師の仕事を始めました。

越尾さん

ー講師生活はいかがでしたか?

正直なところ、当時は教えるという立場がしっくりこなかったのです。

まだ若かったこともあり、指導者としての器ができあがっていなかったことと、演奏者や表現者として自分自身が前に出たいという気持ちが大きくなっていきました。

なので講師の仕事は数年で辞め、パソコンを用いて音楽データや音源を作る仕事に携わるようになりました。

越尾さん

ーこれまでとは全然違う分野に踏み込んだんですね。

それが意外と電子オルガンの世界との共通点も多かったんです。

先ほど少しお話ししたように、電子オルガン奏者は音楽家とエンジニアの顔を持っています。使う道具であるパソコンはこれまで触れたことはありませんでしたが、音を作っていくという過程はこれまで学んできたものが大いに役に立ちました。

そういった共通点があったからこそ、そもそも音楽データを作るという仕事に惹かれたのだと思います。

越尾さん

ー音楽データと言っても色々とあると思いますが、どのようなものを作っていたのですか?

カラオケ音源や着メロを作っていました。着メロもまだ3〜4和音の時代でしたので、少ない音の中でいかに表現するかを腕の見せ所と捉え、楽しく取り組めましたね。

また、幸運なことに所属した会社ではクリエイターとしての仕事以外にも、CD制作やイベント企画など、様々な業務を担当させていただきました。特にイベント企画では、音楽イベントの立ち上げから集客まで一通り担当していたので、その頃の経験が今の音楽スペース運営でも大いに役立っています。

越尾さん

自身の不満を基に企画した親子コンサートが転機に

ーそこから現在の活動への転身には、どのような経緯があったのですか?

出産を機に仕事を辞めたのですが、そこで物心ついてから初めて音楽から離れた生活を送るようになったんです。

音楽から離れて育児に専念する生活を送る中で、改めて音楽の偉大さを感じることがよくありました。例えばわらべうたも立派な音楽で、追求していくと奥が深いんです。人ってこんな小さいうちから音楽に親しんでるのか、という驚きでもありました。

越尾さん

ー確かに子育てに音楽は欠かせませんね。

それと同時に、親子で音楽を楽しめる場って意外と無いんだな、とも感じるようになりました。

ママ友たちから「たまにはコンサートでも聴いてみたいよね」なんて話が出ることもあったのですが、子連れだと生演奏を聴ける場所が無い。だったら自分で場を作っちゃおうと、津田沼のピアノがある小さなカフェで親子向けコンサートを開催したのが転機になりました。最終的には音楽サロンで50名定員のイベントに150人からの申し込みを頂くほどになり、保育園やコミュニティセンターでのリトミック講座などもやらせて頂くようになりました。

越尾さん

ー最初はしっくりこなかった講師としての活動に再び戻ってきたのですね。

親子向けコンサートで、子どもたちの音楽への鋭い反応に驚かされることが何度もありました。そういった子どもたちの姿を見て、もっとこの子たちを伸ばしてあげたいという気持ちが芽生えたんです。

また、それと共に背中を押されたのが「私も昔ピアノを習ってたんだけど今は全然弾けなくて…」というママさんたちからの声だったんです。

それってすごくもったいないことですよね。音楽は生活を豊かにしてくれるものなので、たとえ一時期離れてしまったとしても、また音楽に戻ってこれる土台を持つ人を増やしたいと思うようになりました。

越尾さん

ーご自分で教室を構えようと思ったのはなぜですか?

本来であれば、幼少期にリトミックで土台を培った後に、さらにピアノなどを通じて一貫した音楽の学びを重ねていくことが理想だと考えています。

でも、保育園などのレッスンでは卒園したらそこで関係が途切れてしまう。理想を実現するためには実現するためには、自身の教室を持つ必要があると思ったんです。

越尾さん

ーSolanaは音楽教室ではなく「音楽シェアスペース」とありますよね。どのようなコンセプトの場所なのでしょうか?

ピアノのあるこの場所は、音楽教室としての利用はもちろんのこと、シェアスペースとして近隣の方に貸し出しています。

私が理想とするのは「あたりまえに音楽がある暮らし」です。この場所で様々な音楽ワークショップや音楽イベントが開催されることで、近隣のみなさんに気軽に音楽を楽しんで頂けたらと考えています。

また、地域の親子同士がコミュニケーションを取れる場としても利用して頂きたいんです。私自身が知り合いのいない船橋で不安を抱えながら育児を始めたので、同じように市外から引っ越されてきた人が地域に溶け込むお手伝いができたらとも考えています。

越尾さん

船橋への想いと今後の展望

ー越尾さんが思う船橋の良いところ・もっとこうだったら良いのにというポイントを教えてください。

様々な場所でたくさんのイベントが行われていて、すごく前向きなエネルギーを感じる街だなと思っています。

その一方で、これからどんなイベントがあるんだろうと検索しても思ったように情報が出てこないので、外から来た身としては少し閉鎖的な雰囲気も感じてしまいます。見せ方があまり上手くないというだけかもしれませんが。

越尾さん

ー最後に、今後の越尾さんの展望をお聞かせください。

まずは新しくオープンした自分の教室をうまく運営していくことが目標です。自立して音楽に取り組める子供たちを育てたいと思っています。

それともう一つ考えているのが、想いや技術を持って活動している若い音楽家たちの支援です。せっかく良いものを持っているのに、その打ち出し方や魅せ方がイマイチだと感じるアーティストの姿をよく見ます。これは私が音楽家だけでなく、会社勤めの経験もあるからこその視点かもしれません。そんな自分の経験を活かして、若い人たちの後押しができたらと考えています。

越尾さん

越尾ひろみ – ピアノ・リトミック講師

 

洗足学園音楽大学音楽学部卒業。新作初演やオペラの伴奏、その他演奏活動で音楽を追求。

また、コンサートの司会・ハイライトオペラの朗読などにも携わる。

音楽教室で講師として勤務した後、大手カラオケ・ゲーム会社で携帯音楽データ・カラオケデータのアレンジや制作ディレクター、CD制作などを務める。そのかたわらコンサートの企画(サントリーホール他)・運営や、webサイト作成にも携わる。

出産を機に幼児期の音楽教育の大切さを実感し、当時各地に展開し始めた親子カフェにて、ピアノ演奏やイベント企画、リトミック等を行い、子供連れでも楽しめる居場所作りについての企画にかかわる。

 

保育園やリトミックサークルにて講師活動を行うほか、行政からの依頼で幼児施設での演奏やイベントを行う事も多い。また近年では、高齢者への音楽指導や認知症予防プログラム作りにも関わり、老人ホームでの訪問コンサートや地域社会福祉での音楽指導も行っている。台湾(パートナー提携音楽教室)での、リトミック・演奏指導を行い、リトミックと日本文化を交えながら指導を行う等経験も有り。

 

その他、幼児向け演奏ユニット「さんさま」を結成し横浜・千葉を中心に子供と一緒に楽しめる音楽イベントで、様々な楽器の演奏や物語にオリジナルの音楽を付けての朗読演奏プログラムの企画などを行う。あるイベントでは、個人開催にもかかわらず、50組の定員に対し150組近くの申し込みがあるイベントにまで成長(現在休止中)。

現在は0歳から音楽が身近にある暮らしを提供したという想いから、ダルクローズメソッドやモンテッソーリ教育の理論を取り入れているリトミック研究センターのプログラムと、ベビーマッサージやわらべうたなども取り入れた0歳からでも音楽・リトミックを体験できるオリジナルレッスンと並行して展開。リトミック研究センターディプロマA認定講師。

 

また、自身の生徒を、ピアノ開始1年で音楽コンクール全国大会幼児部門1位にするなど、リトミックを併用しながらのピアノ指導を行う事で、幼児期の基礎力アップの指導に力を注いでいる。

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